菜園便り355 アオジの死

菜園便り355 2月29日 そしてまた、鳥の死 海側玄関の横の水瓶に、また小さな鳥が浮かんでいた。濡れた羽根がべったりと貼りつき、哀れに小さい。むき出しになった細い足だけがやけに生々しい色にみえる。全体は黒っぽく、暗褐色や炭色も混じり、胸から…

菜園便り354 2020年1月27日

菜園便り3542020年1月27日 今年の旧正月は1月25日だった。いつも2月だとばかり思いこんでいたのであわてて準備。結局、お昼にお雑煮をつくり神棚など4か所にお供えした、もちろん表の恵比須様にも。旧正月まではしめ飾りもおいたままだ。 お供え…

続・文さんの映画を見た日 ニコラ・フィリベール&王兵(ワン・ビン)

続・文さんの映画をみた日去年今年・・・そして映画は続く:ニコラ・フィリベール、王兵(ワンビン) 去年みた映画は18本だった。こんなに少なかったとは、自分でも唖然とする。半分の9本はドキュメンタリー。やっぱり<リアル>はいろいろの意味で人を惹きつ…

菜園便り353 鳥の死、再び 

菜園便り353 10月16日鳥の死、再び 安部文範 海側の玄関横の水がめに小さな鳥の死骸が浮いていた。時々あることだからあまり驚かなかったけれど、やっぱりぎくりとする。そうしてその小ささにびっくりさせられる。生きていても濡れて羽毛がはりついている…

映画評「風車」、「水平塾ノート」他

映画評(西日本新聞「風車」、「水平塾ノート」他) 侯孝賢の少年 今年のアジア賞グランプリ受賞を記念して侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の1980年代前半の映画が回顧上映され、彼の自伝的シリーズのひとつといえる作品『風櫃(フンクイ)の少年』(83…

病枕記  死にぬく力

病枕記 死にぬく力 安部文範8月18日やっと父の初盆の行事も終わり、またゆっくり見舞いができると十一時半頃に病院にいくと、ひどくぐあいが悪い。今まで毎日完食していた食事がまったく入らない。お茶もよく飲みこめないので、気管がつまらないように唇…

ブラウン氏の思いで

ブラウン氏のおもいで中田浩(安部文範) 1 ブラウン氏に初めて会ったのは麹町でのクリスマスパーティだった。大きなお屋敷で来ていた人も多く、偽善的なほどの丁寧な挨拶とどこかたがの外れた、日頃の屈折も全て解放してしまおうとするような大騒ぎに疲れ…

映画を生きる

映画を生きる 0 福岡で行われている現代美術の講座があって、その特別会員のための機関誌として発行されているのが、「IAF Paper」。不思議なことに美術関係の記事はあまり多くなくて、投稿のエッセイがなかなかおもしろくて楽しい。ぼくも映画に関…

続・文さんの映画を見た日

続・文さんの映画を見た日①2009年を顧みよう 新聞に書いていた「文さんの映画を見た日」がうちきりになってから、映画をみる回数は確実に減った。いちばん通っていた映画館、シネテリエ天神がなくなり、百道の福岡市総合図書館ホールでの企画も刺激的で…

文さんの映画をみた日 Ⅱ

ソクーロフ『孤独な声』呼び起こされるもの、生まれるもの だれもがいろんな形で映画と出会い、喜びを、興味を育てていくのだろうけれど、それは途切れることなく続いていて今もわたしたちを誘い楽しませ、豊かにしてくれる。年の終わりに一年を振り返り、最…

文さんの映画をみた日

「亀も空を飛ぶ」(2004年バフマン・ゴバディ監督) 深みへと届く力 どことは名ざせない自分の内の深みを、静かにでも思いがけないほど強く強くうつ映画だ。子供たちをとおして世界が描かれるから、いろんなことが痛いほど剥きだしになる。心臓が鷲掴み…

菜園便り1

菜園便り①2001年6月20日 元気ですか? 梅雨の合間の、さわやかな晴天の後、昨日はまたとんでもない天気でした。強風と豪雨、しかも横殴りだったので、家中で雨漏りです。初めてぼくの部屋の窓際まで漏りはじめ、暗澹たる気持ちでした。文字どおりこの…

菜園便り

菜園便り3011月26日 今年は10月の終わりには、もう冬の恒例の大型烏賊があがったらしく、休日には海岸を歩く人の数も多くなった。波打ち際まできた烏賊をひっかける長い銛の変形のような道具を持っている人もいる。本職の漁師さんもいて、週日も歩い…

菜園便り 

菜園便り八七三月一日 買い物に行く途中の田や畑をぬっていく道は、続いている春の雨と強くなる陽射しで、日ごとにかわっていく。カリフラワーの硬くていけだかな暗緑色の葉、収穫が終わって黒い土に戻った畑。耕耘を待って昨秋から放置されている田は細かな…

菜園便り

菜園便り一二一四月三〇日 さあ、今日にでもと父が思い立った日からぼくの外出が続いて、父はやきもき苛々していたけれど、やっと今日苗を買いに行って夏野菜の植えつけができた。初めていっしょに苗を買いに行った。いつも父が買ってきてくれるのだけれど、…

菜園便り一六一一一月二〇日 強くなった風に鴎がくるくるとまわり、山茶花も開いて、季節がおおいそぎで移っていく。この建物を巡って、人も家族もかわっていく。関係が途絶え、そして生まれる。 菜園便り一六四一二月半ば 杉野さんのこと 玉乃井の片づけを…

菜園便り2074月26日 いつもだと五月に入ってから、「ずっと気になっていたけれどやっと夏野菜の植えつけができた」というところだけれど、今年はあたたかかったせいか(というかすごく不順だった)、気持ちに余裕があったのか、早めに苗を買ってきてす…

菜園便り2232011年1月10日 雪 諦めていた空豆が、次々と芽をふいて伸び始めた、すでに5株。発芽しそうにないなあ、だめかなあと思って買ってきた2本の苗も順調だから、初夏にはどっさり実ってくれだろう。菜園の端に植えた2株のレタスも酷寒の…

菜園便り2769月11日 朝食の準備をしているとちょっと奇妙な気がしてでもなんだかわからずに手を止めると、しんとしたなかにつくつくほうしが鳴いているのが聴こえてきた。半袖のTシャツに短い綿のズボンの、まだまだ夏の気分そのままだったから驚かさ…

2016年-2919年菜園便り327 2016年10月4日 お彼岸も過ぎ、月の光の冴え冴えとした冷たさも伝わってくる季節だというのに、日中は肌を焼く強烈な陽射し、長雨の湿気が一気に蒸発してのひどい湿度だ。この温気のなか、さすがに歌は生まれな…

2018年菜園便り350 10月1日 先月号の「芸術新潮」の特集が「新しい三十六歌仙」だったので、気になって開いてみると、額田王から始まった36人の最後がなんと塚本邦雄だった。そうか、彼の人ももう歴史上の人物なのかと驚きつつ、「超前衛」も半…

菜園便り

旧正月 菜園便り3512月15日 今年は旧の正月が2月5日だった。父が必ず祝っていたので、ぼくも旧正月の元旦だけはお雑煮をつくる。父が正月や盆のあれこれにうるさかったのは、自分の出自である東郷の実家が季節の行事をきちんと祝っていたからだろう…